役員報酬の社会保険料控除ミスにともなう差額精算と定期同額給与への影響について
お世話になります。
一人社長の法人を経営しております、今月の役員報酬の支給において実務上のミスが発生したため、税務上の取り扱いについてお手数ですが、ご相談させてください。
【発生した事象】
今月分の役員報酬において、社会保険料の控除額の計算を誤ってしまいました。
結果として、本来の金額よりも手取り額(実際の銀行振込額)が200円多くなってしまいました。
なお、総支給額(額面)自体は、当初設定した定期同額の金額から一切変更しておりません。
また、弊社には現在、「役員借入金」の残高がございます。
【今後の対応案(検討している処理)】
給与明細データおよび会計ソフトの給与仕訳は、本来の「正しい社会保険料」および「正しい手取り額」に修正します。その上で、多く振り込んでしまった200円の差額(過払分)について、以下のいずれかで処理しようと考えております。
案①:役員借入金との相殺
多く振り込んだ200円を「役員借入金の一部の返済」として処理し、役員借入金の残高を200円減らす。
案②:翌月の振込額での調整(希望)
給与の過払分として翌月に繰り越し、翌月の役員報酬の実際の振込額から200円を差し引いて支給する。
【ご相談・確認したい点】
額面(総支給額)が変わっていなければ、手取り振込額に200円のズレが生じても、「定期同額給与」の損金不算入リスクなどの問題はないという認識でよろしいでしょうか。
既存の役員借入金はあるものの、実務の手間などを考慮し、できれば「案②(翌月の振込額から200円をマイナスして調整する)」での処理を希望しております。 この方法で進めても税務上・会計上、特に問題はございませんでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、ご回答のほどよろしくお願いいたします。
結論から申し上げますと、ご認識の通り「案②(翌月の振込額から200円をマイナスして調整する)」の方法で進めていただいて、税務上・会計上ともにまったく問題ありません。「定期同額給与」の損金不算入リスクについても心配ございませんので、ご安心ください。
国税庁HPが提示する法令・通達等に基づき、理由と具体的な実務処理について解説いたします。
1. 「定期同額給与」の損金不算入リスクがない理由
国税庁が所轄する法人税のルールにおいて、今回の200円のズレが問題にならない理由は以下の通りです。
「支給額」とは総支給額(額面)を指す
法人税法第34条第1項第1号、および法人税法施行令第69条第1項第1号において、定期同額給与は「各支給時期における支給額が同額であるもの」と規定されています。国税庁の「役員給与に関するQ&A」等の各種見解において、この「支給額」とは、株主総会や取締役会等で決議された「総支給額(額面金額)」を指します。
手取り額のズレは判定に影響しない
社会保険料や源泉所得税などの控除項目を差し引いた後の「手取り額(実際の銀行振込額)」は、あくまで実務上の決済金額に過ぎません。今回のミスのようにお母体となる「総支給額(額面)」が毎月同額で一切変更されていないのであれば、事務誤認により手取り額に一時的な過不足が生じても、定期同額給与の要件を外れることはなく、損金不算入のリスクはありません。
2. 「案②(翌月調整)」で進める際の実務・会計処理
ご希望の「案②」で処理する場合、翌月も「定期同額給与」の要件を完全にキープするため、以下の形で会計ソフトへの入力(仕訳)および精算を行うのが適切です。
多く振り込んでしまった200円は、一時的に社長個人へ貸し出している状態(会社側の債権)となるため、「立替金」などの勘定科目を用いて処理します。
【今月の処理(仕訳イメージ)】
給与明細データおよび会計ソフトの役員報酬は、本来の「正しい社会保険料」および「正しい額面」で計上します。実際の振込額との差額200円を「立替金」として処理します。
(借)役員報酬(定期同額の額面) XXX / (貸)預り金(正しい社会保険料) XXX
(借)立替金(過払分) 200 / (貸)普通預金(実際の振込額) XXX
【翌月の処理(仕訳イメージ)】
翌月も「役員報酬(額面)」の金額は当初の設定から一切変更しません。実際の振込額を計算・支給する段階で、今月発生した「立替金 200円」を差し引いて(相殺して)振り込みます。
(借)役員報酬(定期同額の額面) XXX / (貸)預り金(社会保険料) XXX
既存の「役員借入金」との相殺(案①)でも税務上の問題はありませんが、上記のように「立替金」勘定をワンクッション挟んで翌月の振込額で精算する(案②)方が、役員借入金の残高管理を動かさずに済むため、実務の手間としても最もシンプルでスマートです。
- 回答日:2026/06/26
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