創業1期目、役員報酬0円にするのと月10万円取るのとでは、どちらがよいでしょうか
お聞きしたいことは次の4点です。
1. 1期目の役員報酬を0円にして、生活費は会社から借りる(役員貸付金)という形を勧められました。実務上、これはありでしょうか。認定利息など注意点があれば教えてください。
2. 役員報酬0円だと、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できないという理解で合っていますか。
3. 日本政策金融公庫の創業融資の審査で、役員報酬0円は不利に働きますか。
4. 役員報酬を出す場合、いつまでに決める必要がありますか。設立から3か月以内という理解で合っていますか。
【前提】
・2026年10月設立予定の株式会社。代表取締役1名のみ、従業員なし
・決算期9月/資本金200万円
・1期目の売上見込みは月20〜40万円程度、固定費は年90万円ほど
・設立後に創業融資300万円程度の申込を予定
・現在、健康保険に未加入の期間があり、設立を機に社会保険へ加入したいと考えています
知人の経営者から「自分は今年の役員報酬をゼロにした。給与でもらわず会社から借りる形もある。ただ決算書はきれいには見えない」と言われました。
融資と社会保険の両方をふまえて、どちらを選ぶべきか判断の分かれ目を教えてください。
ご質問ありがとうございます。1期目の役員報酬をどうするかは、会社の資金、融資、社会保険のどれにも関わるため、判断が難しいところですよね。4点を順番にご説明します。
① 役員報酬0円で、生活費を会社から借りる方法
実務で行われることはありますが、気をつけたい点がいくつかあります。会社が代表者にお金を貸す形になりますので、利息を取らない場合、税務上は通常の利率で計算した利息が収益として認定されることがあります(法人税基本通達9-2-9の経済的利益の考え方)。利率は貸し付けた年ごとに決まりますので、国税庁のタックスアンサー(No.2606)でご確認ください。また、貸付金が大きくなって返済の見込みが立たない状態が続くと、後から報酬(賞与)として扱われ、損金にならない場合があります。決算書でも、役員貸付金は資産としての評価が低く見られがちです。
② 役員報酬が0円の場合の社会保険
健康保険・厚生年金は、会社から報酬を受ける人が対象になる仕組みで、報酬がゼロだと標準報酬が決められず、加入できないと案内されることが一般的です。ただ、最終的な取扱いは年金事務所か社会保険労務士の領域ですので、設立前に年金事務所へ直接お問い合わせください。
③ 創業融資への影響
審査の基準は金融機関が決めており、私は日本政策金融公庫の内部基準を確認できていません。一般には、生活費の出どころや返済の原資を説明する必要がありますので、事業計画と一緒に、報酬をどう設計するかを窓口で相談されると安心です。
④ 役員報酬はいつまでに決めるか
毎月同額の報酬(定期同額給与)を損金にするには、事業年度の開始(設立日)から3か月を経過する日までに金額を決めるのが原則です(法人税法34条1項1号、同施行令69条1項1号イ)。「設立から3か月以内」というご理解は、おおむね合っています。この期限を過ぎてから金額を変えると、変更部分が損金にならない場合があります。
判断の分かれ目は、①会社の資金で報酬を払えるか、②社会保険に入る必要性、③融資での見え方の3つです。報酬を出す場合は、無理のない金額にして、議事録に決議を残してください。
少しでもお役に立てれば幸いです。
※本回答は一般的な情報提供を目的としたものです。詳細な判断は管轄の税務署への確認や、税理士への個別相談をお願いいたします。
- 回答日:2026/10/19
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回答した税理士
年商3,000万円未満の個人事業・小さな会社専門|ふじみの会計事務所(公認会計士・税理士)|決算だけのスポットもOK・全国オンライン
- 認定アドバイザー
- 埼玉県
税理士(登録番号: 150146), 公認会計士(登録番号: 32993)
回答者についてくわしく知るご質問のケースでは、融資と社会保険の両方を考えると、役員報酬を0円として会社から生活費を借りる方法は、あまりおすすめしません。
まず、役員貸付金として処理すること自体は可能ですが、実際に返済することを前提として、貸付額・返済期限・返済方法・利率などを明確にしておく必要があります。無利息・低利で貸し付けた場合、原則として一定の利率で計算した利息との差額が役員への給与として課税される可能性があります。 また、生活費を継続的に会社から借りる形になると、役員貸付金が膨らみ、決算書上も会社から役員への債権が増えるため、資金繰りや財務内容の説明が難しくなる点にも注意が必要です。
社会保険については、今回のように代表取締役1名のみで、その役員が無報酬の場合、健康保険・厚生年金の被保険者がいないため、法人として新規適用を受けることができません。設立を機に社会保険へ加入したいのであれば、実際に役員報酬を設定することが重要です。
日本政策金融公庫については、「役員報酬0円だから融資に通らない」という明確な基準があるわけではありません。ただし、公庫は創業計画や必要資金・調達方法、事業開始後の資金繰りなどを確認します。役員報酬を0円にして生活費を会社から借りる計画よりも、生活に必要な報酬を適切に設定し、そのうえで会社の運転資金を確保する計画のほうが、事業と個人の資金を明確に分けやすいでしょう。
役員報酬を設定する時期については、「設立から3か月以内」という理解は概ね正しいですが、正確には事業年度開始の日から3か月を経過する日までに改定することが、定期同額給与として損金算入するための原則です。今回、10月設立・9月決算であれば、原則として第1期開始から3か月以内に決定することをおすすめします。
今回の条件であれば、「社会保険に加入したい」「生活費を安定して確保したい」「創業融資を受ける予定がある」という3点を考慮し、無理のない範囲で役員報酬を設定し、会社からの役員貸付金に依存しない資金計画にすることが基本的にはおすすめです。具体的な報酬額は、月20~40万円程度の売上見込み、固定費、融資額、生活費を踏まえて決めるのがよいでしょう。
実際の役員報酬額や社会保険の取扱いは、設立時期や報酬額、事業実態によっても異なるため、設立前に税理士・社会保険労務士へ確認しておくと安心です。
- 回答日:2026/09/10
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1. 役員報酬0円+役員貸付金という設計について
実務上は「あり」ですが、リスクは複数あります。
税務上の位置づけ
会社が役員に無利息または低利で金銭を貸し付けた場合、適正利率との差額は役員に対する経済的利益(給与)とみなされます(所得税基本通達36-49)。
実務上の注意点
・金銭消費貸借契約書を必ず作成し、返済期日・利率・返済原資を明記する。「なんとなく借りて、なんとなく返す」状態は税務調査で否認・給与認定のリスクが高まります。
・返済原資の見込みがないまま貸付が累積すると、実質的に役員報酬の付け替えと認定される可能性があります。
・貸付金は貸借対照表上「資産(貸付金)」として残り続けます。これが2で述べる融資審査上の評価に直結します。
・代表者に相続が発生した場合、この貸付金債権は相続財産に算入されます(相続税法上、金銭債権として評価)。ご本人だけの会社とはいえ、一応念頭に置くべき点です。
・設立第1期から報酬0円とする場合、法人税法34条の定期同額給与の要件(「同額」であること)自体は0円でも満たすため、損金不算入の問題は生じません。問題は「認定利息」と「融資・社保への影響」の側にあります。
2. 役員報酬0円だと社会保険に加入できないか
ご理解のとおりで概ね合っています。
・健康保険・厚生年金は「報酬」を基礎に標準報酬月額を算定する制度のため、報酬(労務の対償)がなければ算定の基礎自体が存在せず、被保険者資格を取得できません。
・日本年金機構の実務上も、報酬支払いの実態がない役員は資格取得が認められません(将来的に支給予定があっても、現時点で支払いがなければ不可)。
・加入できない場合は国民健康保険・国民年金への加入となります。国民健康保険には被扶養者制度がない点も、扶養家族がいる場合は考慮が必要です。
3. 日本政策金融公庫の創業融資審査への影響
法令上の直接の不利要件ではありませんが、実務上はマイナスに働きやすい要素です。
2024年4月に「新創業融資制度」は「新規開業・スタートアップ支援資金」に一本化され、自己資金要件(創業資金総額の1割以上)は制度上撤廃されました。ただし審査の現場では依然として自己資金の有無・比率が重視される傾向が続いています。
審査・面談では「代表者の生活費をどう賄うか」「事業からの資金流出がないか」が確認されます。
役員報酬0円+会社からの貸付という構図は、事業性資金(融資金を含む)が生活費に流用されるリスクとして見られやすく、資金繰り計画の甘さや事業の持続可能性への疑義を招きやすいです。
貸付金が決算書(貸借対照表)に計上されている状態は、金融機関からは「事業に使われず社外に流出した資金」と評価される傾向があります(これは融資実務の慣行であり、税法上のルールではありません)。
今回のケースは「設立後に融資を申し込む」予定とのことなので、申込時点ではまだ決算書がない(創業計画書ベースの審査)点は救いです。ただし面談で「生活費はどうしますか」と聞かれた際に「会社から借ります」と答えるのは心証面で得策ではありません。
4. 役員報酬を出す場合の決定期限
ご理解のとおり、実務上は「設立から3か月以内」が目安です。
根拠:法人税法34条1項1号(定期同額給与)、法人税法施行令69条1項1号
条文上は「各事業年度開始の日から3月を経過する日(3月経過日等)まで」にされた改定が定期同額給与の要件を満たす改定とされています。
設立第1期は設立の日が事業年度開始の日となるため、設立の日から3か月以内に株主総会(または取締役の決定)で報酬額を決定する必要があります。
いったん決定すると、期中の増額改定は原則として損金不算入(増額分)となり、減額改定も「業績悪化改定事由」等の特別な事情がない限り認められません。
3か月経過後に決定・改定した場合、その事業年度は「定期同額給与」に該当しない部分が生じ、損金不算入となるリスクがあります。
- 回答日:2026/09/02
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