税理士に相談できること15選|できない範囲・他士業との境界線まで

はじめに

「これは税理士に聞いていいことなのか、それとも別の専門家か」
経費や節税の細かい話、相続のこと、人を雇うときの社会保険、設立登記──事業をやっていると、相談相手の選び方で迷う場面が想像以上に多くあります。

ネットで見つかる解説記事の大半は「税理士の独占業務は3つ」と一行で済ませて、相談例を5つほど並べるだけです。
それはそれで間違ってはいないのですが、実務で迷うのはむしろその先で、「これは税理士に相談できる内容なのか、それとも別の専門家に相談すべき内容なのか」という境界線です。

相談できる範囲を10〜15項目くらいでざっくり把握しておかないと、相談する前から自分で「これは税理士に相談する内容ではないだろう」と決めつけてしまい、結果的に税理士をうまく使えなくなることもよくあります。

そこで本記事では、税理士に相談できることを網羅したうえで、税理士に頼めないこと・他の専門家に振るべきことを5つの士業の境界線として整理しました。

あわせて、開業前から事業承継までの5つのライフステージ別に「いま聞くべきこと」の早見表、初回相談やスポット相談でそのまま使える質問例、最後に「聞いてもムダな質問」のNG例まで通しで載せています。
読み終わったときに、自分の悩みが「税理士に相談できる項目のどれに当てはまるか」をすぐ判断できる状態になるはずです。

※掲載されている情報は、2026年8月時点の情報です。法律や税制など、情報が変更される可能性がありますので、必ず事前にお調べください。

「自分の悩みが税理士に相談していい範囲かどうか分からない」「税理士で対応できる話なのか、他の専門家を探すべきかを知りたい」という方は、freee税理士検索のfreee税理士コーディネーターへの無料相談もご活用ください。悩みの内容をうかがったうえで、税理士で対応できる範囲か・他の士業を紹介すべきかを一緒に整理し、必要に応じて相性のよい税理士を中立の立場でご提案します(相談料・紹介料はかかりません)。

1. 税理士に相談できることの「全体像」を3つの軸で押さえる

一覧に入る前に、税理士に相談できる範囲を見極めるためのポイントを3つだけお伝えします。ここを押さえておくと、自分の悩みが税理士に聞いていい話なのかどうかの判断が早くなります。

1-1. 税理士には「独占業務」と「任意業務」がある

税理士の業務は、税理士法第2条で「税理士の独占業務」が3つ定められています(出典:税理士法 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237)。

区分 内容
独占業務(税理士法第2条) 1. 税務代理
2. 税務書類の作成
3. 税務相談
任意業務(税理士でなくてもできる業務) ・記帳代行
・月次試算表の作成
・経営助言など

実務で押さえておきたいのは、「税のことを個別具体的に相談する」のは独占業務であって、税理士の資格を持たない人には依頼できないという点です。

記帳代行や経営相談だけなら、記帳代行業者やコンサルタントにも依頼できます。ただし、税金にからむ判断(経費にできるか、どの勘定科目にするか、節税策が本当に効くか)まで踏み込むと、結局は税理士にまとめて頼んだ方が安心、というケースは少なくありません。

1-2. 相談できる内容は「税」だけではない

「税理士は申告書を作る人」というイメージが強いですが、実際の相談範囲は経営の周辺までかなり広がります。
本記事の第2章で挙げる項目のうち、純粋な税務申告にあたるのは半分くらい。残りは資金繰り・補助金・経営計画・事業承継・相続といった「税金がからむ経営判断」の話です。

顧問契約を結ぶ場合は、月次面談で「先月の業績の見方」「年末納税の予測」「投資判断の振り返り」まで踏み込んで話す事務所も少なくありません。

税理士を「申告書を作ってくれる人」ではなく「数字をもとに経営の相談ができる人」として捉えると、活用の幅が大きく変わります。

1-3. 「税理士に相談できないこと」がある

逆に、税理士には相談できない(資格上、踏み込めない)領域もあります。
代表的なのは法律問題(弁護士)、登記(司法書士)、社会保険・労務(社労士)、許認可(行政書士)、金融商品の販売(FP・IFA)です。

それぞれの境界線は第3章でまとめていますが、この区分を知っておくと、「税理士に聞いたら『それはうちでは無理です』と言われた」という肩透かしを避けやすくなります。

信頼できる税理士は、自分の範囲外と判断した相談に対しては、提携している弁護士や司法書士を紹介してくれることが多いです。

まず税理士に「これは誰に相談すべきですか」と聞いてみるだけでも、最初の一歩としては十分意味があります。

2. 税理士に相談できること【15項目一覧】

ここからは、税理士に相談できる内容を下記の項目に分けて整理します。各項目の右側に、独占業務か任意業務かを記載しています。

#1~5 税理士に相談できること【15項目一覧】
# カテゴリ 区分
1 確定申告・青色申告(個人事業主) 独占業務
2 法人税申告・決算(法人) 独占業務
3 経費判断・勘定科目 一部任意業務を含む
4 節税対策 独占業務
5 消費税・インボイス制度 独占業務

順に内容を見ていきます。

2-1. 確定申告・青色申告に関する相談(個人事業主)

個人事業主・フリーランスにとって、もっとも相談の多い領域です。
具体的には、青色申告承認申請書の提出時期や、複式簿記での記帳方法、青色申告特別控除を受けるための要件などが含まれます。

青色申告特別控除は、現行では最大65万円(e-Tax提出または優良な電子帳簿保存の要件を満たした場合)です。
複式簿記での記帳が前提なので、自分でやるのに不安がある場合は、税理士に記帳方法を相談したり、記帳代行込みの顧問契約を結ぶという選び方もあります。

なお令和8年度税制改正により、2027年分以降は一定要件を満たした場合の青色申告特別控除額は最大75万円となる予定です。
控除額・要件は最新版を国税庁公式情報でご確認ください(出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm )。

医療費控除や住宅ローン控除といった所得控除の適用範囲、ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告の関係なども、判断に迷えば相談できる内容です。

2-2. 法人税申告・決算に関する相談(法人)

法人の場合は決算書類の作成、法人税申告書、地方税申告書、消費税申告書、勘定科目内訳明細書といった一連の書類が対象です。

法人の決算・申告は個人の確定申告と比べて複雑で、税効果会計や繰越欠損金、特別償却・税額控除などの判断も出てくるため、自社だけで対応する小規模法人は実務上ほぼないのが現状です。
設立1期目の決算は届出書の出し忘れで控除を取り逃すケースもあるため、設立直後から税理士に相談を始めるのが安心です。

2-3. 経費判断・勘定科目に関する相談(個人・法人共通)

「これは経費にしていいのか」「どの勘定科目で処理すべきか」という相談は、日常的によくあります。
具体的には、接待交際費・会議費・福利厚生費の線引き、自宅兼事務所の家賃や通信費・車両費をどこまで経費にするか、10万円以上の備品を資産にするか一括経費にするか、旅費規程や出張日当の運用などです。

判断の根拠を残しておかないと、あとで税務調査が入ったときに説明できないリスクが残ります。

事業に直接関係があるか、金額が妥当だと説明できるか、プライベートでの使用が混じっていないか──このあたりを言葉にして整理するのを手伝ってもらうと、判断基準を整理しやすくなります。

2-4. 節税対策に関する相談

節税は、税理士に依頼してよかったと感じる人がもっとも多い領域です。主な相談トピックは次のとおりです。

  • 小規模企業共済(個人事業主・法人役員向けの退職金制度)
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済。掛金が損金算入可能)
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)
  • ふるさと納税の最適ライン
  • 設備投資のタイミング(少額減価償却資産の特例・特別償却・税額控除)
  • 役員報酬の設計(法人の場合)
  • 生命保険の活用(法人契約)

注意したいのは、節税は「事業内容・利益額・将来計画」の3つで答えが変わるため、誰にでも当てはまる正解はないという点です。

「絶対に節税できる方法を教えてください」と聞くのではなく、「現状の利益見込みで、年内にできる節税策を3つ挙げるとしたら何ですか」という聞き方の方が、現実的な答えが返ってきます(具体的な質問例は第5章で整理します)。

2-5. 消費税・インボイス制度に関する相談

2023年10月にインボイス制度が始まって以降、消費税まわりの相談は一気に増えた領域です。

具体的には次のような内容が対象になります。

  • 課税事業者・免税事業者の判定(基準期間の課税売上1,000万円ラインなど。詳細は国税庁「No.6501」)
  • インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をするかどうか
  • 2割特例(インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった場合の負担軽減措置。2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間が対象)
  • 少額特例(1万円未満の取引のインボイス保存不要の経過措置)
  • 簡易課税制度の選択

個人事業主の場合、現行の「2割特例」は令和8年分(2026年分)の申告をもって予定通り終了します。
ただし、令和8年度税制改正で創設された3割特例があります。
令和8年度税制改正により、個人事業主を対象とした新たな激変緩和措置として、令和9年分(2027年分)および令和10年分(2028年分)の消費税申告において、納付税額を売上税額の3割に抑えることができる「3割特例」が新設されました(出典:国税庁「3割特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm)。

特例の終了を見据え、今から「簡易課税」や「本則課税」のどちらを選べば有利になるかを試算し、先々の出口戦略を見直しておくことが重要です(出典:国税庁「インボイス制度特設サイト」)。

#6~10 税理士に相談できること【15項目一覧】
# カテゴリ 区分
6 電子帳簿保存法 一部任意業務を含む
7 税務調査・修正申告・更正の請求 独占業務
8 法人化(法人成り)の判定・設立 独占業務(一部)
9 役員報酬・社会保険料の設計(法人) 他士業の領域と重複
10 資金繰り・融資・補助金 任意業務
2-6. 電子帳簿保存法に関する相談

2024年1月から、電子帳簿保存法(電帳法)の電子取引データ保存が本格運用に入りました。メールで受け取った請求書PDF、ネット通販の領収書、クラウドサービスの利用明細など、電子でやり取りした取引データは、紙ではなく電子のままで保存する義務があります(一定の保存要件あり)。

相談内容としては、電子取引データの保存方法、優良な電子帳簿保存制度(青色申告特別控除の上乗せや過少申告加算税の軽減措置とつながる)の要件、使っている会計ソフトで要件を満たせるかどうか、などが対象です(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm)。

2-7. 税務調査・修正申告・更正の請求に関する相談

税務調査の通知が入ったとき、立会いを依頼できるのは税理士だけです(独占業務である「税務代理」にあたるため)。
事前の帳簿チェック、想定問答の準備、調査当日の立会い、調査後の追加資料への対応、修正申告が必要な場合の判断──このあたりは税理士に依頼するのが現実的です。

調査が入っていない段階でも、過去の申告のミスに気づいた場合の修正申告、逆に払い過ぎていた税金を取り戻す更正の請求といった相談もできます。

2-8. 法人化(法人成り)の判定・設立に関する相談

「個人事業主のまま続けるか、法人化するか」という判断は、税理士に相談する代表的なテーマです。具体的には次のような内容が対象になります。

  • 現状の年商・利益で法人化した場合に、税負担がどう変わるかの試算
  • 法人化のタイミング(年商1,000万円・利益500〜800万円が目安(一般的な目安の一例)と言われがちですが、個別の事情で大きくぶれます)
  • 株式会社か合同会社か、どちらにするかの選択
  • 設立後の届出書類(青色申告承認申請、給与支払事務所等の開設届、源泉所得税の納期の特例など)

ただし、会社設立登記そのものは司法書士の仕事です。税理士は税負担の試算や設立後の税務はサポートしますが、登記書類の作成・申請は司法書士に依頼するか、設立登記の代行サービスを使うのが一般的です。

2-9. 役員報酬・社会保険料の設計に関する相談(法人)

法人化すると「役員報酬をいくらに設定するか」が、毎期の大きな悩みどころになります。
役員報酬は法人税法上、原則として「定期同額給与」か「事前確定届出給与」のどちらかでないと、損金(経費)として認められません。

期の途中で変更すると損金にできなくなるリスクがあるため、期の初めにきちんと決めることがとても重要です。

加えて、役員報酬の額によって社会保険料の月額が大きく変わります。
税負担と社会保険料の合計でちょうどよいバランスを探る必要があり、これも税理士に相談するのが一般的です。

ただし、社会保険・労働保険の手続き自体は、社労士の仕事と重なります。

役員報酬を「税」の側面から設計するのは税理士、社会保険の届出を提出するのは社労士、というすみ分けが現実的です(社労士のいない事務所では、提携している社労士を紹介してもらえる場合があります)。

2-10. 資金繰り・融資・補助金に関する相談

事業のお金の流れ(キャッシュフロー)や、金融機関からの融資、補助金の事業計画書の作成についても、相談できます。

代表的なのは日本政策金融公庫の創業融資ですが、銀行・信用金庫の事業融資のための事業計画作成、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金などの補助金申請のサポートも含まれます(出典:日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/ )。

なお、補助金の申請代行は行政書士の仕事と重なるため、対応している事務所と対応していない事務所があります。

創業融資の事業計画作成は税理士が得意な分野ですが、補助金については事務所ごとに対応方針が分かれます。

#11~15 税理士に相談できること【15項目一覧】
# カテゴリ 区分
11 経営計画・月次試算表の読み方 任意業務
12 相続税・贈与税・事業承継 独占業務
13 国際税務・海外取引 独占業務(対応事務所が限られる)
14 仮想通貨・暗号資産・株式譲渡所得 独占業務
15 廃業・解散・清算 独占業務
2-11. 経営計画・月次試算表の読み方の相談

顧問契約を結ぶと、月次試算表をもとに「先月の業績の見方」「年末の納税予測」「投資判断の振り返り」といった経営相談ができる事務所もあります。いわば社外のCFOのような関わり方です。

ただし、すべての税理士事務所がここまでやってくれるわけではありません。

申告書を作るのが中心の事務所もあれば、月次面談で経営相談まで踏み込む事務所もあります。
経営のパートナーとして関わってほしい場合は、初回相談で必ず確認しておきたいポイントです。

2-12. 相続税・贈与税・事業承継に関する相談

相続・贈与・事業承継は、税理士の中でも得意・不得意がはっきり分かれる領域です。具体的には次のような内容が対象になります。

  • 相続税の申告(被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内)
  • 贈与税の申告(年間110万円の基礎控除や、相続時精算課税制度)
  • 自社株の評価(中小企業オーナーの相続では大きなポイント)
  • 事業承継税制(特例措置で自社株の相続税・贈与税の納税猶予や免除が可能。出典:国税庁「No.4148」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4148.htm /中小企業庁「事業承継税制」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/
  • 生前贈与の進め方

相続税の経験値は、事務所によって差が大きいです。

法人顧問が中心の事務所だと相続の経験が薄い場合もあるので、事業承継や相続を見据えるなら、相続・資産税に強い事務所を別途探した方がいいケースもあります。

2-13. 国際税務・海外取引に関する相談

越境ECで海外売上がある、海外子会社を持っている、外国人のクライアントから報酬を受けている、海外勤務の予定がある──こうした国際税務の領域は、対応できる事務所が限られます。

源泉徴収の取り扱い、外国税額控除、租税条約の適用、非居住者かどうかの判定、移転価格税制──このあたりは一般的な税理士事務所では対応しきれないことが多く、国際税務に強い事務所を選ぶ必要があります。

該当する方は、初回相談の段階で「貴事務所の国際税務の対応実績」を必ず確認してください。

2-14. 仮想通貨・暗号資産・株式譲渡所得に関する相談

仮想通貨(暗号資産)の売買益、ステーキング報酬、エアドロップなどは、原則として雑所得として申告の対象になります。
取得価額の計算方法(総平均法・移動平均法)、損益通算ができるかどうか、海外取引所を使った場合の処理など、ケースごとに判断が必要なポイントが多い領域です。

株式の譲渡所得や配当所得についても、特定口座の使い方や損益通算、配当控除を受けられるかどうかなど、相談できます。

仮想通貨は経験値が事務所によって大きく違うため、複雑なケースは経験のある事務所を選んだ方が安心です。

2-15. 廃業・解散・清算に関する相談

事業を終了するときの税務も、相談範囲に入ります。
個人事業の廃業届と廃業年の確定申告、法人の解散決議から清算結了登記までの一連の税務処理、繰越欠損金や役員退職金の取り扱いなど、意外と決めることは多くあります。

「事業をやめる」と決めたときに、税理士に一度相談しておくと、無駄な税金を払わずに済むケースがあります。撤退の判断とセットで聞いておきたい領域です。

自分の悩みが税理士の業務範囲だと分かったら、次は相性のよい税理士を選ぶ段階です。エリア・業種・対応サービスから絞り込みたい方はfreee税理士検索の一覧ページ、中立の立場で提案を受けたい方はfreee税理士コーディネーターの無料相談をご利用ください。

3. 税理士に相談できないこと・他の専門家に振るべきこと

ここからは、税理士に相談できない(資格上、踏み込めない)領域を整理します。
事業を続けていれば、必ずどこかで弁護士や司法書士など他の専門家と接点を持つことになるので、誰に何を聞けばいいかを頭に入れておくと、判断が早くなります。

専門家 主な対応領域 税理士との関係
弁護士 法律相談・契約書のリーガルチェック・訴訟代理・債権回収・離婚・遺産分割の調停 法律問題は弁護士の領域(弁護士法72条)
司法書士 会社設立登記・本店移転・役員変更登記・不動産登記 登記は司法書士の領域
社労士 社会保険・労働保険の手続き・就業規則・助成金申請 社会保険関連の届出は社労士の独占業務
行政書士 建設業・古物商・宅建業等の許認可申請・在留資格・遺言書作成支援 許認可は行政書士の領域
FP・IFA 投資信託・保険商品の具体的提案・資産運用ポートフォリオの提案 金融商品の販売は税理士の領域外

それぞれの境界線をもう少し詳しく見ていきます。

3-1. 弁護士領域:法律相談・契約書・訴訟・債権回収

取引先とのトラブル、契約書のチェック、未払金の回収、離婚や遺産分割の調停などは弁護士の仕事です。
税理士法および弁護士法第72条で、税理士が法律問題に踏み込むことには制限があります(出典:弁護士法 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205/)。

ただし、税務訴訟(更正処分に納得できず税務署を相手にする訴訟)については、税理士が「補佐人」として裁判所で発言できる制度があります。
完全に分かれているというより、税務にからむ法律問題はグレーゾーンがある、と思っておくと実態に近いです。

3-2. 司法書士領域:登記関連

会社設立登記、本店移転登記、役員変更登記、不動産の所有権移転登記といった登記関連は、司法書士の仕事です。
税理士は法人化の相談には乗れますが、設立登記そのものは司法書士に依頼するか、自分で申請するか、設立登記の代行サービスを使うのが一般的です。

実務では、税理士事務所が司法書士と提携していて、設立相談から登記までまとめて対応してくれるケースもあります。

3-3. 社労士領域:社会保険・労務

健康保険・厚生年金・労働保険の手続き、就業規則の作成、給与計算(厳密には税理士でも一定範囲は可能)、助成金申請などは社労士の仕事です(社会保険労務士法第2条)。

人を雇うと社労士の出番が増えるので、社労士のいる事務所か、提携先のある事務所を選ぶと、まとめて相談しやすくなります。
給与計算については「税理士が処理する分には差し支えない」とされる範囲もありますが、厳密には社労士の仕事と重なる部分もあるため、運用については事務所ごとに確認してください。

3-4. 行政書士領域:許認可・在留資格・遺言書作成

建設業許可、古物商許可、宅建業免許、飲食店営業許可といった許認可の申請、外国人の在留資格申請、遺言書の作成サポート(公正証書遺言は公証人)などは、行政書士の仕事です。

補助金の申請代行についても、行政書士の仕事と重なります。
補助金は税理士が事業計画作成を手伝うこともあれば、行政書士が手続きの中心になることもあり、事務所によって対応方針が違います。

3-5. FP・IFA領域:資産運用商品の具体的な提案

「具体的にどの投資信託を買えばいいか」「どの保険商品が自分に合うか」といった金融商品そのものの提案は、税理士の仕事ではありません。
FP(ファイナンシャルプランナー)やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の仕事です。

ただし、「iDeCoとNISAをどう組み合わせると税負担が下がるか」「生命保険料控除の上限内でどう配分するか」といった、税の側面からの助言は税理士が答えられる範囲です。

信頼できる税理士は、自分の専門外だと判断した相談に対しては、提携している弁護士・司法書士・社労士・行政書士を紹介してくれることが多いです。

「これは誰に相談すべきですか」と聞くだけでも無駄にはなりません。
むしろ、誰に何を聞けばいいかを整理する最初の一歩として、税理士に聞いてみる価値があります。

4. ライフステージ別「いま税理士に相談すべきこと」早見表

相談する内容は、事業の段階によって大きく変わります。
同じ事業者でも、起業前と黒字化したあと、事業承継を考え始める時期では、聞くべきことの中身が違います。ここでは5つの段階に分けて、いま聞くべきことを整理しました。

ライフステージ 主な相談トピック
起業前・会社設立検討中 ・個人と法人の税負担の試算
・株式会社か合同会社かの選択
・創業融資の事業計画
開業1〜2年目(黒字化前) ・青色申告承認申請、複式簿記の運用
・開業費の経費化
・インボイス登録の要否
黒字化後・成長期(年商500万〜2,000万円) ・節税対策の本格化
・設備投資のタイミング
・法人化の検討開始
法人化前後(年商1,000万〜3,000万円) ・法人成りの税負担の試算
・役員報酬の設計
・社会保険料の見直し
成熟期・事業承継・出口戦略 ・自社株評価
・事業承継税制の活用
・M&A・廃業時の税務

各段階を少し補足します。

4-1. 起業前・会社設立検討中

「個人事業主として開業するか、最初から法人を設立するか」を整理する段階です。
年商見込み・利益見込み・社会保険のコスト・対外的な信用といった視点で、個人と法人の試算を出してもらえます。

この段階ではスポット相談(1〜3時間の有料相談)で十分なケースが多く、設立後に顧問契約に切り替える流れがよく見られます。
日本政策金融公庫の創業融資を予定しているなら、事業計画書の作成サポートも一緒に依頼できます。

4-2. 開業1〜2年目(黒字化前)

開業届と青色申告承認申請を出した直後の時期です。
複式簿記での記帳のやり方、開業費の経費化(5年間で任意償却できる)、自宅兼事務所などの家事按分の根拠資料の整え方──このあたりを最初の年に固めておくと、後の運用が楽になります。

インボイス制度が始まって以降、開業初年度でも「課税事業者になるべきか、免税のままでいくか」が悩みどころになります。
取引先がほぼBtoCなら免税のまま、BtoB中心ならインボイス登録を前向きに検討──といった大まかな判断基準を、自分の事業の中身と照らして詰めていくのが相談のメインです。

4-3. 黒字化後・成長期(年商500万〜2,000万円)

利益が出始めると、節税の選択肢を持っているかどうかで手取りが変わってきます。
小規模企業共済(個人事業主・法人役員向けの退職金制度)、経営セーフティ共済(倒産防止共済)、iDeCo、設備投資のタイミング──このあたりを毎年見直していく段階です。

同時に、年商1,000万円を超えると消費税の課税事業者化が視野に入り、年商2,000万円前後では法人化の検討も具体的な選択肢に上がってきます。
次の段階に向けて「いつ法人化するか」を試算してもらうのが、このステージの定番の相談です。

4-4. 法人化前後(年商1,000万〜3,000万円)

法人化のタイミングは、税理士に相談する代表的なテーマです。
年商だけでなく、利益額・社会保険のコスト・配偶者や家族への給与を出せるかどうか・将来の事業規模感までを踏まえて試算します。

法人化後は、役員報酬の設定、社会保険料との合計でのバランス、定期同額給与のルールを守ること、設立年度の届出書類(青色申告承認申請、給与支払事務所等の開設届、源泉所得税の納期の特例など)の整備が、考えるべきポイントになります。

設立初年度に届出を出し忘れると、あとから取り戻せない控除もあるため、設立前から税理士に相談しておくのが安心です。

4-5. 成熟期・事業承継・出口戦略

事業が安定し、引退・承継・売却を考え始める段階です。
中小企業オーナーの相続では、自社株の評価額が大きなポイントになり、評価額しだいで相続税が数千万円単位で変わるケースもあります。

事業承継税制(特例措置)を活用すれば、後継者に自社株を贈与・相続するときの税金を、納税猶予や免除にすることができます(出典:国税庁「No.4148」 / 中小企業庁「事業承継税制」)。
※ただし、この特例措置の適用を受けるための特例承継計画の提出期限は、法人版事業承継税制では令和8年(2026年)3月31日です。

この制度は要件と期限がややこしいため、相続・事業承継に強い税理士に早めに相談しておく価値があります。
事業を売却する場合(M&A)も、税務面の話(株式譲渡か事業譲渡かの選択、税負担の試算、退職金の支給の組み立て)で税理士の関与が必要です。

5. 初回相談・スポット相談で使える質問例

ここからは、実際に税理士と話すときに使える質問の例を、場面別に整理します。質問が具体的であるほど、税理士側も具体的に答えやすくなります。

5-1. 初回相談で聞いておきたい5つの質問

事務所選びの初回相談(多くは無料)で、最低限聞いておきたい質問はこの5つです。

  • 1. 私の事業規模・業種で、税理士に依頼するメリットはどれくらいありますか
  • 2. 顧問契約とスポット契約、私の状況ではどちらが向いていますか
  • 3. 御事務所が得意な業種・苦手な業種を教えてください
  • 4. クラウド会計ソフト(freee会計などのお使いのもの)に対応していますか
  • 5. 月額顧問料・申告料・記帳代行費の内訳と、含まれる業務範囲を教えてください

特に4番は、事務所ごとに対応状況がかなり違うポイントなので、いま使っている会計ソフトの名前を出して確認するのが確実です。
クラウド会計に対応していない事務所と契約してしまうと、いまのソフトが使えなくなるか、税理士事務所側のソフトに移行することになり、結果的にコストが上がるケースがあります。

5-2. 節税相談で使える質問例

節税相談は「絶対に節税できる方法を教えてください」と聞いても、現実的な答えは返ってきません。次のような聞き方に置き換えると、話が具体的になります。

  • 現状の利益見込みで、年内にできる節税策を3つ挙げるとしたら何ですか
  • 小規模企業共済・経営セーフティ共済・iDeCoの組み合わせで、私の状況に合うのはどれですか
  • 設備投資を年内にする/来年にする、どちらが税負担として有利ですか
  • 役員報酬を月○○円から○○円に変えた場合、税と社会保険の合計でどう変わりますか(法人)
  • 配偶者を青色事業専従者にする/非常勤役員にする、どちらが有利ですか

ポイントは、選択肢を2〜3個ぶつけて「どれが有利か」を聞く形にすることです。税理士側も試算の前提が決まり、答えやすくなります。

5-3. 法人化相談で使える質問例

法人化のタイミング相談で使える質問例です。

  • 現状の年商・利益で法人化した場合、税負担の試算を見せてもらえますか
  • 法人化のメリットとデメリット、私の場合はどれが一番効きますか
  • 設立後1年間で発生する税務上の手続きを、時系列で教えてください
  • 設立初年度の届出書類で、出し忘れると損するものはありますか
  • 株式会社と合同会社、私の事業内容ではどちらが向いていますか

「自分の数字で試算してほしい」とお願いするのが、もっとも具体的な話につながります。

5-4. 月次面談で毎月聞くべき3つの質問(顧問契約者向け)

「顧問契約を結んでいるのに、月次面談で何を話せばいいか分からない」という声はよく聞きます。最低限、次の3つだけ毎月聞くようにすると、面談の質が大きく変わります。

  • 先月の売上・粗利・経費の動きで気になる点はありますか
  • 年末(決算)の納税予測はどれくらいですか
  • 今月中にやっておくべき税務上の対応はありますか

3番目の質問は特に効果的です。
年に何度かは「○○の届出の期限が今月末です」「○○の特例を使うなら今月中に○○を済ませる必要があります」といった、あとから気づくと取り戻せない話が出てきます。

月次面談を「申告書を見るだけの時間」から「やることを洗い出す時間」に変える効果があります。

6. 相談しても意味が薄いこと・聞いてもムダなこと

最後に、税理士に聞いても建設的な答えが返ってこない質問のパターンも、あらかじめ整理しておきます。聞いてもムダというより、「聞き方を変えれば建設的になる」質問の例です。

6-1. 「絶対節税できる方法を教えてください」

節税は、事業内容・利益額・将来の計画・他の控除との組み合わせで効果が変わるため、誰にでも当てはまる「絶対に節税できる方法」はありません。
この聞き方をすると、税理士側も「合法的な範囲で順番に検討します」という一般論しか返せません。

建設的な聞き方:「現状の利益見込みで、年内にできる節税策を3つ挙げるとしたら何ですか」「私の事業の段階で、まず検討すべき節税策の優先順位を教えてください」

6-2. 「他事務所のサービス内容・料金と比較してください」

同業の税理士事務所の評価は、職業倫理の観点からほぼ行いません。
「他事務所はもっと安いと聞いた」「他社の見積もりではこうだった」と比較を依頼しても、踏み込んだ回答は期待しにくいのが実態です。

建設的な聞き方:自分で2〜3事務所の見積もりを集めて比較する。各事務所には「料金に対して、貴事務所が特に力を入れている部分を教えてください」と聞く

6-3. 「うちはいくら稼げますか」「この事業はうまくいきますか」

売上の予測や事業の将来性の判断は、経営者の責任です。
税理士は数字の整理は手伝えますが、事業の判断そのものはしません。「うちは伸びますか」と聞かれても、答えようがありません。

建設的な聞き方:「この売上見込み・経費構造で、損益分岐点はいくらですか」「設備投資○○円を回収するには月いくらの売上が必要ですか」と、数字の整理として聞く

6-4. 「具体的にこの投資信託を買うべきですか」

第3章でも触れたとおり、金融商品そのものの提案は税理士の仕事ではありません。
「税の側面でiDeCoとNISAをどう組み合わせるべきか」までは答えられますが、「どの投資信託を買うべきか」はFP・IFAに相談する話です。

建設的な聞き方:「iDeCoとNISAの組み合わせで、私の所得水準で税負担をどれだけ減らせますか」「生命保険料控除の上限を使い切るには、どの保険種別をどう組むのが税負担として有利ですか」
聞き方を変えるだけで、税理士から引き出せる答えの幅は大きく広がります。

7. 相談する税理士を選ぶ時のチェックポイント

相談する内容が整理できたら、次は誰に相談するかの絞り込みです。
詳しくは関連記事「税理士の探し方」で扱っていますが、初回相談の前にざっと押さえておきたいチェックポイントだけ挙げておきます。

  • 業種の実績: 自分と同じ業種での対応事例があるか
  • 対応ソフト: 使っているクラウド会計ソフト(freee会計など)に対応しているか
  • 月次面談の頻度: 契約に月次面談が含まれるか、別料金か
  • 料金体系: 顧問料・申告料・記帳代行費の内訳と、想定外の追加料金が発生するケース
  • 返信スピード: メール・チャットの返信の速さ
  • 相性: 初回相談での会話のテンポ、こちらの話をどれだけ聞いてくれるか

相性については、「初回相談で30〜60分話してみて、自然に質問を引き出してくれるか」で判断できます。実務面の実績と、コミュニケーションの相性、両方を見るのが基本です。

8. まとめ:自分の悩みを項目に当てはめてみる

ここまで、税理士に相談できることを項目に分けて整理し、相談できない他の専門家の仕事、ライフステージ別の早見表、初回相談で使える質問例まで通しで見てきました。最後にポイントを5つに絞ります。

  1. 税理士に相談できる範囲は、税の申告書作成だけでなく、経営の周辺(資金繰り・補助金・事業承継・相続)まで広く広がる
  2. 一方で、法律問題は弁護士、登記は司法書士、社会保険は社労士、許認可は行政書士、金融商品はFP・IFAの仕事に分かれる。信頼できる税理士は他の専門家を紹介してくれる
  3. 相談する内容は事業の段階で変わる。起業前・黒字化前・成長期・法人化前後・事業承継期で、聞くべきことの中身が違う
  4. 初回相談は、質問を準備して臨むと、限られた時間で具体的な話ができる
  5. これらのテーマは質問の仕方によって、得られる回答の具体性が大きく変わります。聞き方を変えれば建設的な話になる

次のアクションとしては、自分の悩みをどの項目に当てはまるか確認してみて、「これは税理士に相談すべき話だ」と分かったら、第5章の質問例を使って初回相談を予約する──というのが、最短ルートです。

自分の悩みが税理士の業務範囲か中立的に整理してほしい、相性のよい税理士を提案してほしい、という方は、freee税理士検索のfreee税理士コーディネーターへの無料相談をご活用ください(相談料・紹介料はかかりません)。エリア・業種から自分で探したい方は、freee税理士検索の一覧ページから検索条件で絞り込めます。

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