起業の税理士活用ガイド|起業準備中・設立直後・創業1年目で違うポイント

はじめに

「起業を考えているが、税理士は本当に必要なのか」
「いつ相談するのが正解なのか」

起業準備中にこうした疑問にぶつかる方は多いはずです。

起業前は税理士の必要性がピンと来ず、設立してから慌てて探す方が多くいます。
起業前に相談しておけば、個人事業主と法人どちらで進めるかの試算、設立費用を抑えるための工夫、創業融資の事業計画書の練り直しなど、後から変更しにくい判断を一緒に進めてもらえます。

設立後になってから「事前に相談しておけばよかった」と感じるケースは少なくありません。

本記事では、起業時の税理士の使い方を「起業準備中/会社設立段階/創業1年目」の3つの段階に分け、それぞれで相談すべき内容を整理します。

法人化の判断や創業融資、役員報酬や社会保険のスタート時の決め方、青色申告や消費税の届出など、創業期につまずきやすいポイントまでひととおり見渡せるようまとめました。

※掲載されている情報は、2026年8月時点の情報です。法律や税制など、情報が変更される可能性がありますので、必ず事前にお調べください。

「起業時に税理士が必要か迷っている」「自分のステージで何を相談すべきか整理したい」という方は、freee税理士検索のfreee税理士コーディネーターへの無料相談もご活用いただけます。起業の状況や事業計画をお伺いしたうえで、依頼有無の判断材料と、相性のよい税理士を中立の立場でご提案します(相談料・紹介料はかかりません)。

1. 結論:起業時に税理士は「必須ではないが、相談したほうが得をする場面が多い」

先に結論をお伝えします。
起業時に税理士を雇うことは、法的には必須ではありません。

法人税申告も個人事業主の確定申告も、自力で行うこと自体は制度上可能です。
ただし起業のタイミングには「後から取り返しがつきにくい判断」がいくつも重なっており、相談しなかったことで発生する追加の税負担や対応工数が、相談費用を上回るケースもあります。

1-1. 法的に税理士が必要なケースは限定的

法人税申告の代行は税理士の独占業務ですが、社長自身が自社の申告を行うことは法的に許されています。個人事業主の確定申告も同様です。
「税理士を雇わないと法律上アウト」という場面は、起業の段階では出てきません。費用との兼ね合いで迷う方が多いのは、この事情が背景にあります。

1-2. それでも、起業時に税理士に相談する経済的メリットは大きい

起業の入口には、後から動かしにくい判断が並びます。
青色申告承認申請の提出期限、役員報酬の決定タイミング、消費税の課税事業者を選ぶか否か、決算期の決め方などです。
どれか1つでもミスがあると、初年度の税負担が数十万〜数百万円単位で変わるケースもあります。

創業融資を申し込むなら、事業計画書の精度は税理士に関わってもらうかどうかで大きく変わります。
日本政策金融公庫の新規開業資金にしても、自治体の制度融資にしても、書類の中身と面談での説明がかみ合っているかを見られます。

起業準備と並行して事業計画書を作成することに負担を感じる方も少なくありません。

1-3. 「いつ相談するか」より「何を相談するか」で判断する

起業時の税理士の使い方は、「すべて任せる」と「相談したい部分だけ頼む」のあいだに大きな幅があります。設立後の顧問契約だけでなく、設立前に1回だけ相談する単発の依頼という選択肢もあります。

月額顧問契約を前提に検討する前に、自分の段階で何を相談したいかを言葉にしておいたほうが、税理士に払う費用に見合う効果を得やすくなります。

2. 起業の3段階で税理士に相談すべき内容が違う

本記事の中心となる章です。起業時の税理士の使い方を「起業準備中」「会社設立段階」「創業1年目」の3つの段階に分け、それぞれで相談すべき内容を整理します。
同じ「起業」でも、段階によって税理士に頼みたい中身は大きく変わります。

2-1. 段階①:起業準備中(事業構想〜開業届/設立前)

まだ会社を作るか、個人事業主で始めるかを決めきれていない段階です。税理士に相談する価値が一番高いのは、ここで「最初の決め事」を一緒に考えてもらえるためです。

  • 個人事業主 or 法人の判定:売上見込み、家族への所得分散の必要性、社会保険、信用力の4つの軸で試算
  • 法人化する場合の最初の決め事:資本金、株主構成、決算期、本店所在地の決定
  • 創業融資・補助金の進め方:日本政策金融公庫、自治体の制度融資、小規模事業者持続化補助金など
  • 届出スケジュール:開業届、法人設立届、青色申告承認申請、消費税課税事業者選択届出書など

この段階で税理士に相談するなら、顧問契約ではなく単発の相談で十分なケースが多くあります。
1回数千円〜数万円の相談料で、最初の判断を見直せれば費用対効果は高くなります。

2-2. 段階②:会社設立段階(設立手続き〜開業直後)

法人化を決め、定款認証・登記・税務署届出の手続きを進める段階です。
事務手続きと並行して、設立直後に発生する税務・労務の決め事を固めていく必要があります。

  • 会社設立手続きの伴走:定款認証、登記、税務署・都道府県・市町村への設立届
  • 消費税課税事業者選択の判断:インボイス制度の影響を踏まえて課税事業者になるか考える
  • 役員報酬の決め方:事業年度開始から3か月以内に決定。社会保険料との兼ね合いで適切な金額を試算
  • 創業融資・公庫・制度融資の申込支援:事業計画書のチェック、金融機関との面談同席

この段階では、設立手続き自体は司法書士、社会保険・労働保険は社労士の領域も絡みます。税理士と司法書士・社労士のつながりを持つ事務所なら、抜け漏れなく進めやすくなります。

2-3. 段階③:創業1年目(設立後〜初決算)

設立後から初めての決算までの1年です。月次の経理が回り始め、初決算と法人税申告が見えてくる段階です。

  • 月次の記帳・試算表チェック:クラウド会計を使うなら、税理士とどう共有するかが大事
  • 年末調整・法定調書:従業員を雇った場合に必要な年次業務
  • 初決算と法人税申告:1年目の決算は判断ポイントが多いため、顧問契約か決算だけのスポット依頼を検討
  • 2年目以降の消費税課税事業者判定:消費税の納税義務判定は、基準期間や特定期間、資本金等の要件を踏まえて判断する必要があります。

この段階から本格的に顧問契約に移行するパターンが多く、月額数万円程度の顧問料が事業の継続的な費用に組み込まれていきます。

段階別の相談ポイント一覧
相談ポイント 起業準備中 会社設立段階 創業1年目
法人化の試算 ★★★ -
会社設立手続きの伴走 ★★★ -
創業融資・補助金 ★★ ★★★
役員報酬の決め方 - ★★★
消費税課税事業者の選択 ★★ ★★★ ★★
届出関連(青色申告承認申請等) ★★ ★★★
月次記帳・試算表 - ★★★
年末調整・法定調書 - - ★★
初決算・法人税申告 - - ★★★

★が多いほど、その段階で税理士に相談する効果が大きい項目です。準備中と設立段階で相談すべき中身が違う点を踏まえて、税理士との関わり方を切り替えるのが現実的な進め方になります。

3. 起業時に税理士に依頼するメリット

段階別の相談ポイントを踏まえたうえで、起業時に税理士に依頼することで得られる代表的なメリットを5つ整理します。

3-1. 法人化の試算で最初の判断を間違えない

「個人事業主のまま続けるか、法人化するか」は、起業期で最大の決め事の一つです。判断材料は売上規模だけではありません。

家族への所得分散の余地(配偶者を役員にできるかなど)、社会保険の加入義務、取引先からの信用、銀行融資の通りやすさ、節税の選択肢の広さなど、いくつもの要素が絡みます。

税理士に相談すれば、こうした要素を数字に落とし込んだ試算で見せてもらえます。
「年商1,000万円を超えたら法人化」といった一般論ではなく、ご自身の業種・取引内容・家族構成を踏まえた個別の試算を見たうえで判断できる点が、独学で進める場合との大きな違いです。

3-2. 創業融資や補助金申請の準備を進めやすくなる

日本政策金融公庫の新規開業資金、自治体の制度融資、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など、創業期に使える融資・補助制度は複数あります。
これらは申請書類の中身、特に事業計画書の筋の通り方と数字の整合性が審査結果を左右します。

税理士のなかには金融機関出身者や、認定経営革新等支援機関(経営革新等支援機関認定制度に基づく国の認定を受けた事業者)として補助金支援に強い事務所もあります。

事業計画書の収支見通しのチェック、金融機関との面談で何を話すかの整理、補助金の事業計画の練り直しなど、申請の過程に直接関わってもらえる価値は小さくありません。

3-3. 届出・初期の決め事のミスを防げる

起業期は届出ラッシュです。代表例は次のとおりです。

  • 青色申告承認申請書:法人の場合、設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度の終了の日とのうち、いずれか早い日の前日までに提出する必要があります(国税庁)。
  • 消費税課税事業者選択届出書:インボイス制度との兼ね合いで、課税事業者になるか否かを判断
  • 役員報酬の決定:事業年度開始から3か月以内に決定し、原則として期中変更は認められない
  • 社会保険の新規適用届:法人設立後5日以内に年金事務所へ提出

このどれか1つでも漏れると、初年度の税負担が膨らんだり、欠損金の繰越控除が使えなかったりと、地味に痛い影響が残ります。
税理士に伴走を頼めば、提出スケジュールの管理と、どの選択肢が自社に合うかの検討をセットで進められます。

3-4. 創業期の経営判断を一緒に考えてくれる

設立直後は、設備投資のタイミング、初期メンバーの採用、外注比率、契約形態など、判断材料が乏しいなかで決断を迫られる場面が続きます。
月次の試算表を見ながら、売上・粗利・キャッシュフローの推移を税理士と一緒に確認できる体制があると、感覚ではなく数字を見ながら判断しやすくなります。

月次面談を契約に含めておくと「数字を見せてもらう」だけでなく「数字を一緒に読む」関係になります。
創業期はお金の出し方が後戻りしにくいぶん、外部の目があるかないかで判断の質が変わってきます。

3-5. 税務調査への備えが早めにできる

法人の場合、設立3〜5期目あたりで初めての税務調査が来る可能性があります。
創業期から領収書類の整理、勘定科目のルール、帳簿の付け方を税務調査を見据えた形で整えておけば、調査の場でスムーズに説明できます。

「税務調査が来てから慌てる」のではなく、設立直後から整えておくほうが、長い目で見れば負担は軽くなります。

設立から2〜3年目に税理士をつけて、過去の帳簿をさかのぼって直すパターンも実務ではよくありますが、その費用と労力を考えると、最初から整えておくほうが結果的に安くつく場面が多くあります。

起業の段階や業種に合った税理士は、まずは選択肢を眺めながら絞り込んでいくのが現実的です。freee税理士検索の税理士一覧ページでは、エリア・業種・対応サービス(法人設立支援/創業融資対応/オンライン面談など)で絞り込んで税理士を探していただけます。

4. 起業時に税理士に頼める業務の範囲

「結局、税理士に何を頼めるのか」をフラットに整理します。起業期に税理士に依頼できる主な業務は次のとおりです。

4-1. 設立前後で頼める主な業務一覧
業務 概要
会社設立手続きの伴走 定款認証・登記・税務署届出
創業融資・補助金の事業計画書チェック ・公庫の新規開業資金
・補助金の事業計画書チェック
法人化の試算 個人事業主と法人での税負担、社会保険、手元資金の比較
月次記帳・試算表作成 クラウド会計連携での月次データ管理
役員報酬・社会保険の決め方 損金算入要件と社会保険料を踏まえた金額設定
年末調整・法定調書 従業員を雇った場合の年次業務
法人税・消費税申告 決算書作成、別表作成、税務署提出
税務調査対応 立会い、帳簿説明、追加資料対応
インボイス・電帳法対応 取引先の状況を踏まえた制度対応の伴走
4-2. 司法書士・社会保険労務士との役割分担

起業期は税理士だけで完結する業務ばかりではありません。
役割分担の目安は次のとおりです。

  • 登記そのもの:司法書士の独占業務(税理士は伴走・連携)
  • 社会保険・労働保険の手続き:社会保険労務士の領域(税理士は連携)
  • 税務署・都道府県・市町村への届出:税理士の領域

「税理士に頼めば全部完結」ではないため、司法書士・社労士とのつながりを持つ事務所のほうが、起業時の手続きを漏れなく進めやすくなります。
事務所選びの際に、こうした連携先があるかを確認しておくと安心です。

5. 起業時に税理士に依頼するタイミング:設立前 vs 設立後

「いつ税理士に相談すべきか」は、起業を考え始めた段階で最も迷うポイントです。

先に結論をお伝えすると、創業融資の予定がある、または法人化と個人事業主で迷っている場合は設立前、それ以外は設立後でも問題ないケースが多くあります。

5-1. 設立前から相談したほうがよいケース

次のいずれかに当てはまる場合は、設立前の単発相談を強くおすすめします。

  • 創業融資を申し込む予定がある:事業計画書の内容や数値の整合性が重要となるため、専門家に相談するメリットがあります
  • 法人化と個人事業主で迷っている:年商見込み・所得分散・社会保険の試算が判断材料になる
  • 決算期・資本金・株主構成を最初にきちんと決めておきたい:これらは設立後に変えづらい
  • 役員報酬・配偶者を役員にするかの判断が必要:所得を分散させる組み方しだいで税負担が変わる

単発相談は1回数千円〜数万円から受けられる事務所もあり、最初の出費としては小さい範囲で済みます。

5-2. 設立後でも問題ないケース

次のような場合は、設立後の相談でも遅くはありません。

  • すでに法人化を決めていて、税理士に判断してもらう部分がない
  • 創業融資を予定していない、または規模が小さい
  • まずは自分で記帳して、決算前の数か月になってから依頼したい
  • 個人事業主として小さく始め、軌道に乗ってから法人成りを検討している

設立後に依頼する場合でも、青色申告承認申請の提出期限(「設立後3か月経過日」と「第1期終了日」のうち、いずれか早い日の前日)までに提出する必要があります。

5-3. タイミング判断の流れ

迷ったときの判断の流れを、簡単に整理します。

  1. 創業融資を申し込む予定がある → 設立前推奨
  2. 法人化と個人事業主で迷っている → 設立前推奨
  3. 設立後すぐに従業員を雇う予定がある → 設立直後推奨
  4. 上記の条件にいずれも当てはまらない場合 → 初決算の3〜4か月前に単発相談でも可

「全部YES」なら、設立前から顧問契約も視野に入る段階です。
「全部NO」なら、決算の3〜4か月前に税理士を探し始めれば間に合います。

ただし、青色申告承認申請の提出期限(設立3か月以内)だけは間に合わせる必要があるので、その点は押さえておいてください。

6. 起業時の税理士費用の相場

続いて、費用の話に進みます。
「払う価値があるか」を判断する材料として、起業時の税理士費用の目安を整理します。

下記は複数の税理士事務所が公開している料金表に基づく一般的な業界相場であり、個別の見積もりは事務所ごとに異なります。

6-1. 単発相談・設立前後の単発依頼
内容 費用目安
起業前の単発相談(1〜2時間) 1回数千円〜2万円程度
法人化の試算 1〜3万円程度
創業融資の事業計画書チェック 3〜10万円程度(融資額や内容で変動)
会社設立手続きパッケージ 5〜15万円程度(司法書士連携込みも)
補助金の事業計画書サポート 10〜30万円程度(補助金額に応じて成功報酬型もあり)

設立前後のスポット支援は、月額顧問契約とは別枠で「単発の依頼」として頼める事務所が多くあります。

6-2. 月額顧問料(設立後の継続契約)
規模 月額顧問料 決算料(年1回)
小規模法人(売上1,000万円未満) 2.0万〜5.0万円 月額顧問料の4〜6か月分
小規模法人(売上1,000万〜3,000万円) 2.0万 〜 3.5万円 月額顧問料の4〜6か月分
小規模法人(売上3,000万〜1億円) 3.5万 〜 6.0万円 月額顧問料の4〜6か月分

年間総額のイメージは、創業1年目の小規模法人で 年間数十万円程度が一般的な相場感です。

6-3. 費用を抑える3つの工夫

費用を抑えたい場合の現実的なやり方は次の3つです。

  1. 記帳は自社で行う:クラウド会計を使えば、月次の入力作業を自社で行い、税理士には試算表のチェック・月次面談・決算のみを頼む形にできます。記帳代行を外すと月額顧問料が下がりやすくなります。
  2. オンライン面談中心の事務所を選ぶ:訪問対応をなくすと、訪問費・交通費分の費用を抑えられます。創業期にスピード感を持って進めるなら、オンライン中心のほうが日程調整もしやすくなります。
  3. 設立後すぐに顧問契約ではなく、決算だけのスポット依頼から始める:軌道に乗るまでは決算のみの単発依頼で十分なケースもあります。事業が安定してきた段階で顧問契約に切り替える、段階的な進め方も現実的な選択肢です。

7. 起業期にやりがちな失敗と税理士の活用で防げる落とし穴

起業期には、独学で進めると見落としやすいポイントがいくつかあります。「相談していれば防げた」と感じる典型例を4つ紹介します。

7-1. 失敗例①:青色申告承認申請を出し忘れる

法人の場合、青色申告承認申請書は 「設立後3か月経過日」と「第1期終了日」のうち、いずれか早い日の前日までに提出する必要があります(国税庁)。出し忘れると初年度から白色申告となり、欠損金の繰越控除(最大10年間)が使えなくなります。

創業期は赤字スタートも珍しくありません。せっかくの欠損金を翌期以降の黒字と相殺できないのは、将来の税負担に影響する可能性があります。
税理士に伴走を頼んでおけば、設立日から提出期限までを管理してもらえるため、まず出し忘れは起きません。

7-2. 失敗例②:役員報酬を後から変更できない

役員報酬は、事業年度開始から3か月以内に決定する必要があり、原則として期中の変更は損金算入できません(業績悪化等の一定要件を満たす場合を除く)。
「もう少し売上が伸びてから役員報酬を上げよう」というのは、税務上ほぼできない仕組みになっています。

役員報酬の適切な金額は、所得税・住民税・社会保険料の合計で考えて決めます。
社会保険料は等級表で段階的に決まるため、月額が数万円違うだけで年間負担額が十数万〜数十万円単位で変わります。

ここを独学で細かく組み立てるのは難しく、設立直後に税理士に試算を頼んでおくのが現実的です。

7-3. 失敗例③:消費税課税事業者の選択を判断ミスする

新設法人は一定の場合に消費税の納税義務が免除されますが、資本金やインボイス登録の有無などによって取扱いが異なります。
ただしインボイス制度に対応するため、自ら課税事業者になる道もあります。

取引先からインボイス発行を求められる状況であれば、課税事業者になったほうが取引を続けるうえで有利になる場面もあります。

ここで難しいのが、課税事業者選択届出書は 一度提出すると原則2年間は変更できない点です。

判断ミスをすると、しばらくのあいだ消費税の納税義務だけが残るかたちになります。
取引先の状況・売上規模・今後の事業計画を踏まえた判断が必要なため、税理士に試算してもらう価値があります。

7-4. 失敗例④:個人事業主時代の帳簿を活かしきれない

個人事業主として始め、軌道に乗ってから法人成りしたケースで起きやすい話です。
法人成りで会計が分断されると、過去の帳簿データを後から見返しづらくなります。

月次の売上推移を追いにくくなったり、過去の取引先データを引き継げなかったりすると、創業1年目の経営判断で困る場面が出てきます。

クラウド会計を使っていれば、個人事業主時代のデータと法人化後のデータを並べて見やすくなります。
法人成りのタイミングで税理士に相談し、データの引き継ぎ方を一緒に決めておくと、創業1年目の月次の数字管理が格段に楽になります。

8. 起業期の税理士の選び方:4つの確認ポイント

起業期に税理士を選ぶ際、特に確認しておきたいポイントを4つに絞って整理します。一般的な税理士の探し方の全体像については別記事で詳しく扱っています。

8-1. 創業融資・補助金の支援実績

創業融資を予定しているなら、まず確認したいのが融資支援の実績です。具体的には次の点を見てください。

  • 税理士事務所が認定経営革新等支援機関として認定を受けているか
  • 過去の創業融資の支援件数・通過率の傾向
  • 補助金(小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金等)の事業計画書作成支援実績

認定経営革新等支援機関であれば、創業融資の金利優遇制度や、補助金の加点要件で有利になる場合があります。

8-2. クラウド会計への対応

freee会計などのクラウド会計を使う前提なら、税理士側もクラウドに対応していることが必須に近い条件です。確認したいのは次の3点です。

  • 自社が使っているクラウド会計ソフトを税理士も操作できるか
  • 月次データの共有方法(IDログイン共有か、CSV送付か)
  • 紙の領収書を毎月送る前提のやり方ではないか

紙の領収書を毎月郵送するやり方は、起業家のスピード感に合わない場面が多くあります。クラウド前提でデータをやり取りできる事務所のほうが、月次のやり取りが楽になります。

8-3. 業種・規模感の合いやすさ

起業期は規模が小さいため、大企業を主に相手にしている事務所だと優先順位が下がる可能性があります。確認したいのは次の点です。

  • 業種実績(IT/飲食/建設/医療/士業など、業種ならではの判断を理解しているか)
  • 創業期からの伴走実績(売上が小さい段階での月次面談のやり方)
  • 顧客層の中心ゾーン(自社と近い規模のクライアントが多いか)

業種ごとの経費判断、勘定科目の使い方、業界の取引慣行は、業種実績がない事務所だと初年度に説明する手間が増えがちです。

8-4. やり取りの頻度・方法

起業期はスピード感が大切です。「質問への返事の速さ」「面談の頻度」「チャット対応の可否」は、契約前に確認しておきたい項目です。

  • 月次面談の頻度(毎月/隔月/四半期ごと)
  • チャットツール(Slack、Chatwork等)での質問対応の可否
  • 質問への回答スピードの目安(即日/2〜3営業日/週内)

「質問してもなかなか返事が来ない」関係は、起業期に最も避けたい状況です。初回面談のときに、こちらから「月にどのくらい質問が発生しそうか」を伝え、相手がどこまで対応できるかをすり合わせておくと、ミスマッチを防げます。

9. まとめ:起業時の税理士活用は「段階で相談内容を切り替える」

起業時に税理士をどう使うかは、起業の段階によって相談する内容が変わります。本記事のポイントを5つに整理します。

  1. 起業時の税理士活用は3段階で相談内容が違う
    起業準備中(法人化の判断・創業融資)、会社設立段階(届出・役員報酬)、創業1年目(月次・初決算)で、税理士に頼みたい中身は変わる
  2. メリットは5つ
    法人化の試算/創業融資の通過率/届出ミス防止/経営判断の相談相手/税務調査への早めの備え
  3. 創業融資を予定している、または法人化で迷う場合は、設立前から相談したほうが費用に対する効果が高い
    単発相談は1回数千円〜2万円程度から。設立前の判断ミスは後から取り戻しにくい
  4. 役員報酬・消費税・青色申告など、創業期ならではの落とし穴は税理士の活用で防げる
    どれか1つでも誤ると、初年度の税負担が数十万円単位で変わるケースがある
  5. 起業期は「全部依頼」より「段階ごとに単発相談+顧問契約」を組み合わせるのが現実的
    いきなり月額顧問契約に縛られる必要はなく、まずは単発相談から始める選択肢を持っておく
次の一歩

ご自身の起業段階を確認し、いま相談したい内容を1〜3つ書き出してみてください。そのうえで、段階ごとに単発で頼むか、顧問契約で伴走してもらうかを判断します。
「税理士に何を頼みたいかがまだ固まっていない」段階であれば、freee税理士コーディネーターの無料相談で相談内容を一緒に整理してもらうのも選択肢の一つです。

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